春高バレーの名将によって・・
春高バレー界での名将であった国分秀男氏の勧めで読み始めたのがこの本。読書嫌いの私でも、とうとう第5巻まで読むこととなってしまった。 私の中でこれまで暗いだけのイメージしかなかった明治期の先人に対し、敬意を抱くきっかけとなったのも本書の影響によるものである。
明治日本の純粋さを見た
列強の侵略の恐怖に追い立てられるようにして開国、ほとんど無血に近い明治維新という革命を成し遂げた明治日本が、悲痛なまでに苦しい国際情勢の中で「生き延びるため」に、まだ色濃く残る「武士道」の世界と「近代」の相克の中で、苦しみぬきながらも必死にはい上がっていく姿が描かれています。ただし、戦争や英雄礼賛の物語ではなく、世間の風評にとらわれず、内外の文献を調査のうえ、登場人物の力量や性格について誉めるべきところは誉め、批判すべきことは徹底的に批判することにより、この時代の人間像を過不足なく描ききっています。 作者も指摘している通り、正岡子規、秋山兄弟という一応の主人公は、この「時代」と「人間像」を描くための一つの題材にすぎません(もちろん、彼ら3名はそのそれぞれの生き方について、英雄たるにふさわしいほどの魅力を持ってはいます) 明治日本人の「生きる」ことへのひたむきさ、一方での、生き抜くために必要な合理主義的な考え方、未来を信じる楽観的な見方などは、前途に希望がもてず閉塞感がただよう現代の我々こそ、見習うべきものなのではないでしょうか。 第5部では、ロシア国内の帝政打破への動き、奉天での決戦の様子が描かれています。 特にロシア側の独裁政治の悪弊が、始終物量で圧倒的に優位に立っていたロシアを敗戦へと追い込んでいったのかが興味深い点です。 必ずしも優秀ではない独裁者と取り巻きのイエスマンによる絶対政治は、独裁者の意に添わないことは、どんなに正しいことでもいわない、やらないといった弊害を生み出します。 現代日本の社会や企業においても同じようなことがないでしょうか。 消費者の方を向かず、上司の機嫌取りや組織防衛を第一と考えている企業がどういう運命をたどるのか。現代でもこの教訓は重要な意義があるものと思います。
文藝春秋
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